野口能也の関心アロケーション1

人工知能が囲碁のチャンピオンを破ったというニュースを見かけて、そこで株式市場を引き合いに出すコメントを見かけて、何か書こうかと思ったのだが、特に新しいことが見つからない。そもそもチェスや将棋における計算機の活躍だって、特に最近の話ではないと思うのだが、いずれにせよ我々は道具の活用について、太古の昔から常に工夫してきた。小さな例で恐縮だが、かつてシステム運用と呼ばれていた類はクオンツへと変身し、最近ではスマートベータなる商品を生み出したが、もっとも大きく変わったのは、おそらく名称である。あるいは株の運用を巡っては、PERのような指標まで遡ることができるかもしれないが、要するにキリがない。しばらく前に、バフェットの投資をシステマティックに真似て、より広範な対象へと適用する「バフェットロボ」についての記事を書いたのだが、ここを出発点に、計算機の強さについて振り返ることから始められるだろうか。

「バフェットロボ」のつくり方 : FOLIO(フォリオ)
http://www.bsfolio.com/archives/27500001.html
言うまでもなく連中の武器はスピードである。セブンイレブンのレジを待ちながら暗算できない合計金額は、ピピピっと商品をレーザーで読み取られるや否や、あっという間にカネを要求してくる。バフェットロボの強さは、バフェットの投資手法(の一側面)を真似しつつ、うまいことデータを利用して、圧倒的に広範に展開する点にあった。そうして他の投資家が未だ気付いていない「間違った」価格を発見できたとき、その投資は、後に利益を積み上げる。どうしても投資判断に、ここで1つの軸を突き刺したくなってしまう。そう、ミスプライスだ。

間違いの発見<---------->未来への判断

真剣に投資したことがある者なら誰でも知っていることだが、裁定と賭けを明確に区別することは難しい。例えば誤発注の反対側に立てば、ほとんど間違いに見えるだろうが、デリバティブズが理論価格と乖離するとき、その「明らかな」度合いは小さくなる。JR東日本とJR西日本の株価を割り算し推移を観察するとき、間違いの発見は主観と判断を伴わざるを得ないが、日経平均の「適切な」水準ともなれば、もう何もかも怪しい。これらを一次元に並べたとき、もちろん左に寄るほどスピードは要求される。連中の得意な分野だ。



他方で判断さえ、機械が学習すれば済むと嘯くラディカルな連中の鼻息は荒い。もちろん例えばテクニカル分析の歴史は、計算機以前まで遡るわけだが、よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。その時の流れに合った判断を、ピックアップして組み合わせる階層構造は、どんなに上位のレイヤーを覗いたところで、やはり普遍は無限に遠く感じられるのはなぜか。我々が明日、コーラに飽きてしまうか否かを決めるのは、コーラを飲む我々の全体である。我々が明日、白いたいやきに飽きてしまうか否かを決めるのは、白いたいやきを食べる我々の全体である。ある朝僕らが飛び込んだ河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらずなのである。およげ、未来を。

WRITER

野口能也|@equilibrista
有限会社(オキシスタジオ)代表。社内に調査室を設け、投資とリスクに関するコンサルティング業務を行う。主要顧客はこれまでに、国土交通省、JP Morgan、星野リゾート、マネックス証券等。投資とリスクに関する知識を一般に広げることで、ビジネス環境の効率を高め、豊かな社会の実現に寄与することを目指す。



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