野口能也の関心アロケーション1

今回のテーマ

「日経平均ボラティリティー・インデックス」
(参考)日経平均ボラティリティー・インデックス - 日経平均プロフィル

ブラックとショールズが見つけたもの


5月の下旬から株価が乱高下を続ける中で、次は「日経平均ボラティリティー・インデックス」はどうかと、さすが敏腕編集長のアンテナは常に鋭いわけだが、しかし"volatility"を「ティー」と伸ばして書くセンスはどうなのかと、そこだけはいつも気になるわけです。日本経済新聞社さん、一服するボラティリ茶じゃないんだぜ。

http://indexes.nikkei.co.jp/nkave/images/nk225vi_ja_5.png

そもそもボラティリティって何だと、聞かれると困ってしまうのは、この分野に足を突っ込んで、説明を求められたことのある関係者には共通の体験だと思うのだが、ここでは株価の変化の「バラツキ度合い」くらいに考えていただいて差し支えない。バタバタ上下に動いていれば大きく、静かで平和な海のような相場なら小さいわけだ。そしてこの指数は、いわゆるオプション取引と深く関係している。オプション取引が何か知らなくとも、一度くらいは耳にされたことがあるはずと思う、タイトルに付けた、ブラックとショールズの名前とともに。今日は、彼らの発見について話してみたい。


さてオプションとは、ある条件の下で、一定期間のうちに、リスク資産を買ったり売ったりできる権利のことで、やや乱暴だが、例えば株価が下がったときだけ儲かるとか、株価が上がったときだけ損するとか、それぞれ逆とか、そういった証券のことだと思ってよい。で、ブラックとショールズは、そうした証券の値段の付け方に「公式」を与えた。詳しくは教科書に譲るが、彼らによれば、ある株式にかかるオプションの価格は、1)現在の株価、2)オプションの行使価格、3)株式リターンのボラティリティ、4)満期までの時間、5)無リスクの金利、の関数であるという。

この中にたったひとりだけ、仲間外れがいるのだが、誰だかわかるだろうか。そう、あらかじめ決まっている「条件」ではなく、我々が「推定」するところのボラティリティである。否応なく演繹される事実として、つまりオプションの取引とは、他のどれでもない、ボラティリティの取引であることがわかる。もちろん、例えば株価の変化に応じて、オプションの価値は影響を受けるわけだが、相当する分の株式や先物を売買することで、相殺することができる。誰でもだ。だとすれば、我々がオプションの形で取引していたのは、実はボラティリティだったのだ。

そうなると、そうした調整の面倒をすっ飛ばして、ボラティリティそのものを観察し、ボラティリティそのものを取引した方が、話が早そうだと思われないだろうか。僕も同感だ。そのような期待に応えようと開発された金融商品が、いわゆるVIX指数や日経平均VIと、その上に乗る先物取引である。

取引されている多くのオプションから「逆算」されるボラティリティは、もちろん期間構造のようなものを持ち、また行使価格にも依存し、要するにさまざまだが、えいと代表選手を構成して、それらのすべてにかかる第一次近似を提供する指数は、なかなかに便利である。要するにオプション取引にかかる勝負のうち、実質的な大部分はここにあるのだから、まずはここについて大きな見通しを整え、あるいは持つことを諦め、そうでない他の戦略、例えば先の「さまざま」にかかる裁定取引や、異なるリスク資産のボラティリティ比較へと発想を伸ばす土台として、安心して踏み締めやすい。

よく考えるまでもなく自然に感じられると思うが、株価と違ってボラティリティは、時間とともに右肩上がりを期待する性質のものではない。安倍首相の経済政策、黒田日銀の金融政策に反応して、上にも下にもヤンチャに暴れた株価も、長い目で見れば、他に「事件」さえ起きなければ、徐々に落ち着きを取り戻すだろう。そう思うと、いまボラティリティ指数を「売り」たくなるかもしれない。先のチャートを、上下にひっくり返したような商品なら「買い」たくなるかもしれない。そう考えて、この指数にかかる先物価格に連動するETNを、試しに覗いてみた。

NEXT NOTES 日経平均VI先物指数 ETN
http://nextnotes.com/lineup/detail/nkyvi.html

開けてビックリ玉手箱、何だよこれ、売れないじゃん。ボラティリティを簡単に扱うことのできる商品が、つい最近だが、上場されたのは素敵なことだが、現時点では貸借銘柄に指定されておらず、空売りはできなかった。つまりこいつを利用して、今後のボラティリティが上がる方に賭けることは簡単なのだが、下がる方に賭けることはできない。面倒な先物やオプション取引の組み合わせが要る。せっかくバタバタ相場の中に居るってのに。えーと東証さん、野村さん、ベア型の商品をつくりませんか?

WRITER

野口能也|@equilibrista
有限会社(オキシスタジオ)代表。社内に調査室を設け、投資とリスクに関するコンサルティング業務を行う。主要顧客はこれまでに、国土交通省、JP Morgan、星野リゾート、マネックス証券等。投資とリスクに関する知識を一般に広げることで、ビジネス環境の効率を高め、豊かな社会の実現に寄与することを目指す。 過去の記事一覧

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